セコメディック病院 脳・血管内科部長 泉本一医師
未然に防げる脳卒中後編はくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤のお話です。
脳は軟膜、くも膜、硬膜と3重の膜で覆われています。くも膜の内側に出血するのがくも膜下出血です。突然バットで殴られたような強い頭痛が起こり、意識がなくなることも多く、発症すると1/3の方が亡くなるとされる怖い病気です。
くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤の破裂です。脳動脈瘤は脳動脈のもろい部分が瘤(こぶ)状に膨らんだものです。破裂しない限り無症状のことが多いです。まれに動脈瘤の場所によっては、周囲の脳神経を圧迫する等して、ものがぼやけて見える等の症状が出現する事があります。しかし破裂するとくも膜下出血を起こし致命的になる事があります。
破れた動脈瘤(破裂脳動脈瘤)を止血することが血管内治療の技術を用いて可能です。コイル塞栓と言います。もうひとつ開頭クリッピングという方法とどちらが望ましいか、患者さんごとに脳神経外科医と検討しています。
一般的には高血圧の治療をすること、禁煙する事が重要とされます。これは脳卒中全体に言える事です。他に破れる前の動脈瘤、未破裂脳動脈瘤を見つけ治療する事です。くも膜下出血を起こしていない未破裂脳動脈瘤が、脳ドック等で偶然見つかる事があります。未破裂脳動脈瘤は内服薬ではなくなりません。
破裂脳動脈瘤と同様に、コイル塞栓術、開頭クリッピング術で治療する事ができます。しかし未破裂脳動脈瘤は必ず破裂するわけでありません。破裂率はおおむね年間1~2%程度とされます。
破裂する前に、コイル塞栓術や開頭クリッピング術によって処置する事は予防手術ということになります。手術には合併症をおこす危険性もあります。破裂を防ぐために手術を行うはずが、手術中にカテーテル等で動脈瘤を破ってしまい、くも膜下出血を引き起こすことがあります。 動脈瘤の形や大きさ、場所によっては破裂する可能性が高いものもあるとされますので、各個人で破裂しやすさを検討し、予防手術を受けるかどうかを考えなければなりません。