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新型コロナウイルス感染症の遠隔診療 ーセコムVitalook

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院長 星誠一郎(ほし せいいちろう)
 感染⼒の⾮常に強い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に拡⼤を続けています。本邦も例外ではなく、2020年4⽉16⽇、全国を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣⾔が発令されました。地域中核病院である当院も、緊急事態宣⾔発令前の4⽉1⽇には患者様対応の準備を整え、感染予防策(standard precautions)を再徹底し、感染症閉鎖病棟を設置しました。

 その後も各地域で感染が拡⼤し、患者様対応にあたっている医療機関の中には院内感染が発⽣しているところもあります。まさに医療崩壊の危機にさらされているのです。

 院内感染対策としては、感染症隔離病棟に出⼊りする職員を最⼩限に減らし、拡散しない対策が必要です。今回のように、世界中で爆発的に拡散した場合、医療資源(マスクやガウン、シールド器材および消毒薬など)にも限りがあり、その消費を可能な限り減らす⽬的でも、当該病棟へ出⼊りする職員を制限する必要がありました。

 その対策として当院が利⽤しているのが、セコム医療システムの遠隔診療⽀援システム「セコムVitalook」(以下、Vitalook)です。オンライン診療や遠隔モニタリングに⽤いられる機器はこの数年、⽬覚ましい進化を遂げています。現在は、患者様が在宅において計測する⽣命兆候(バイタルサイン)を遠⽅の医療機関でリアルタイムに確認できるようにもなっています。Vitalookもその1つで、遠隔で以下のバイタルサインを計測・確認できます。

 Vitalookの付属機器と計測できるバイタルサイン
・⾎圧計(収縮期⾎圧、拡張期⾎圧、脈拍数)

・パルスオキシメーター(⾎中酸素飽和度、⼼拍数)

・体温計(腋窩体温)

・⼼電計(1誘導⼼電図)

・聴診器(⼼⾳、呼吸⾳、腸⾳)




当院の感染症閉鎖病棟(奥の扉の先が閉鎖空間)


患者様側の機器一式(左から血圧計、体温計、パルスオキシメーター、心電計、iPhoneベースの患者様側端末)

 これらの検査機器はiPhoneベースの患者様側端末とBluetoothで接続されており、聴診器以外はワイヤレスで使⽤することが可能です。検査データや⼼⾳、呼吸⾳などは医療機関側(スタッフ側)の端末に送られて、医師らがグリーンゾーン(⾮汚染区域)から確認します。スタッフステーションのPCにウェブカメラを接続し、患者様の端末を通じてテレビ電話を⾏うことも可能です。

⾎糖測定・採⾎以外は⾃⼰測定

 当院は今のところ10床ほどをCOVID-19患者様の受け⼊れに充てています。既に退院した患者様も含めて、その多くは軽症者で⾃⽴歩⾏が可能です。上記の検査機器を2セット⽤意し、1セットは軽症者で共⽤とし、もう1セットは、酸素機器を付けている中等症患者様のモニタリング専⽤として使⽤しています。

 軽症⼊院患者様の場合、まず測定の時間になったらナースコールで呼び出し、検査機器を置いている共⽤場所に移動してもらいます。そして⾎圧や⾎中酸素飽和度、体温などを、テレビ電話を通じて会話をしながら患者様が⾃ら測定します。その上で、データを適切に測定できているかスタッフ側の端末で確認するという流れです。患者様への操作説明は、⼊院の際に⾏いますが、主にはiPhoneベースの患者様側端末の説明を簡単に⾏うくらいです。

その後の機器操作は、テレビ電話機能などを⽤いて実施することができます。
⾎糖測定・採⾎以外は⾃⼰測定

患者様が⾃⼰測定している様⼦(左上から時計回りに⾎圧計、体温計、パルスオキシメーター、⼼電計)

 検査機器のところには洗浄消毒⽤のディスポーザブル型ペーパータオルも設置しておき、患者様⾃⾝が使⽤後に消毒するようにお願いしています。機器もラッピングして使⽤しており、看護補助者が病棟に⼊った際もラップを交換し、消毒を⾏っています。軽症患者様は⾃⽴歩⾏できるくらい体⼒はあるのにもかかわらず病棟から⼀歩も出られませんので、歩⾏運動や医療従事者と会話する楽しみとしても、これらの⾃⼰測定から機器消毒までの⼀連の操作は、⾮常に前向きに、かつ協⼒的に取り組んでくれています。なお、中等症の患者様は看護師がこれらの測定を⾏っています。

 感染管理上は、⼊院時などに必要となる同意書などの⽤紙も隔離した病棟から⼀切持ち出すことができません。そこで、看護師や看護補助者が病棟に⼊った際に患者様側端末の写真撮影機能を⽤いて同意書を撮影し、スタッフ側端末で画像を取り込んでいます。同意書は説明する医師の名前を記載したものをあらかじめお渡しておき、その後、医師はテレビ電話を通してインフォームドコンセントを⾏っています。その後、同意書は病棟内で適切に廃棄処理しています。

 毎⽇の定時的な症状観察、検査結果の説明なども、原則は隔離病棟内には⼊らず、テレビ電話を通じて⾏います。担当医師1⼈は必要最⼩限で病棟に⼊って診療を⾏いますが、それ以外は、緊急時を除いて全く接触することなく診療を⾏うことができます。

医師は基本的にスタッフステーションからテレビ電話を通じて診療を⾏います。ヘッドフォンを付けて遠隔聴診も可能です。

薬剤師や看護師なども接触が激減

 病棟薬剤師に関しても同様です。通常は、⼊院時に患者様のお薬⼿帳を⾒て服薬中の薬剤を調べたり、持参薬を確認する作業がありますが、これも患者様側端末の写真撮影機能を⽤いてデータを取り込み、スタッフ側端末にて画像で確認するようにしました。服薬指導もテレビ電話で⾏っています。これで病棟薬剤師の患者様との接触はゼロになりました。

 緊急時の対応のほか、どうしても病棟に⼊らなくてはならない業務は、⾷事の配膳、清掃、⾎糖測定・採⾎などの検査、Vitalookの機器を⽤いた遠隔聴診、中等症患者様の検査です。これらは、その⽇に⼊る担当看護師1⼈と看護補助者1⼈が個⼈防護具(PPE)を装着した上で隔離病棟に⼊り、作業しています。

薬剤師や看護師なども接触が激減

患者様側端末に接続した聴診器は看護師が操作します。医師がスタッフステーションで指⽰をしながら聴診します。

 職員の出⼊りを最⼩限にするために遠隔診療⽀援システムを利⽤するメリットは下記の通りです。

 COVID-19の院医療に遠隔診療援システムをするメリット

・バイタルサインを遠隔で計測できる

・患者様の様⼦をこまめに確認できる(⾒放されている印象を与えない)

・併診する複数の医師・医療スタッフが安全に関わることができる

・感染物の持ち出しを防ぐことができる

・接触者を最⼩限にすることで院内感染リスクを下げることができる

・マスクやガウンなどの医療資源を温存することができる

 

 COVID-19の問題は世界的に⻑期化するとみられており、しばらくは医療資源の逼迫も続きそうです。本来は、在宅療養中などの患者様が遠隔で診療を受けるために開発されたシステムを、当院では、⼊院医療に⽤いることで職員の安全確保につなげることができました。医療従事者を守ることが最終的には患者様を守ることにもつながるでしょう。安全性を担保し、治療に集中できる環境を医療機関側が整えることで、医療崩壊を⾷い⽌めることができるのではないかと考えています。
(セコメディック病院 院長 星誠一郎)

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