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脳・血管内科|脳血管内治療

脳血管造影検査(カテーテル検査)

カテーテルとは細いストローのような中空の筒。太さは脳血管の奥深くまで進めるものは0.6mm程度、頸動脈までであれば1.2~2.7mm程度を用途によって使いわけている。先端の形状も様々で、目的によって使いわけています。 このカテーテルを肘や大腿から動脈の中に挿入し、目的の頭頸部動脈まですすめて造影剤という薬を動脈の中に直接注入。同時にレントゲン写真を撮ると、造影剤をつかわなければ頭蓋骨しか写らないところを、脳血管の写真が撮影できます。MRIや造影CTでも血管を写す事ができますが、血管造影の方がより鮮明な写真を撮る事ができ、詳細な評価が可能です。 ただし合併症を起こす可能性のある検査なので、誰でも検査するわけではありません。

ともに長さ約100cm、診断カテといわれているもの。
左側のカテーテルは肘から頸動脈をめざすためのもの。
右側のカテーテルは大腿から頸動脈をめざすためもの

脳血管内治療とは

このカテーテルを用いた治療技術です。肘や大腿から動脈の中にカテーテルを挿入し、脳血管を血管の内側から処置します。最近テレビの特集番組でも見る機会が増えました。 従来の開頭手術と違って頭を切らないため、全身麻酔をかけずに治療することも可能な事が多く、開頭手術に比べて身体の負担が小さい治療法です。
こんなことができます。

[1]つまりかけた血管を広げて脳梗塞を防ぐ
●頸動脈ステント留置術

[2]つまった血管を再開通させる脳梗塞の緊急再開通治療
●血栓回収療法

●バルーン(風船)治療

●ステント治療
●薬剤動注

[3]破れた(破れかけた)血管を処置して出血を防ぐ

●くも膜下出血への脳動脈瘤コイル塞栓術

●未破裂脳動脈瘤へのコイル塞栓術

利点・欠点

[利点]

●開頭手術と比べて、患者への負担が少なく、高齢者や合併症をもった方にも施行可能

●治療後の安静や入院期間が短い

●外見的に頭を傷をつけない

●局所麻酔でも施行可能

[欠点]

●脳血管の損傷など合併症の発生時には、重大な後遺症を残すことがある

●脳血管の動脈硬化の程度が強く、屈曲蛇行が著明な場合には、治療困難である

●新しい治療法のため、長期成績が確立されていない。

頸動脈ステント留置術(Carotid Artery Stenting,CAS)

右大腿(足のつけね)に局所麻酔をした後、カテーテルを挿入します。施設によって全身麻酔下に行う場合もあります。また手術の方法によって肘や手首、両足からカテーテルを挿入する場合があります。カテーテルを病変部位へ進め、血管の内側から風船で狭窄部を広げ、さらにステントと呼ばれる金属の筒をはめて補強します。ステントは通常専用のカテーテル内に収まっていますが、形状記憶されていて、血管の中に出すと体温で所定の大きさに広がります。


(左端)治療前です。頸動脈が細くなっています。
2枚目)狭窄の向こう側にフィルターを(網)を置き、手術中の脳梗塞を防ぎます。
3枚目ステントをはめ、バルーン(風船)で大きさを調整します。
4枚目仕上がりです。狭窄部が太くなっています。

[1]頚動脈ステント留置術中の脳梗塞予防

頚動脈ステント留置術の合併症のうち、多いのは手術中の脳梗塞です。頚動脈狭窄部はもろくなっている事が多く、ガイドワイヤーや風船、ステント等をすすめると、もろい部分とこすれ、血栓やプラーク片等が脳へ流れて脳梗塞になります。これを防ぎます。

Distal protectionとProximal flow controlは血流が遮断されるので、脳に側副血行が乏しいと、術中脳に血液が流れず、脳梗塞をおこす可能性があります。Distal filter protectionは血流を遮断しませんが、網なので、血栓やプラーク片が多いととらえきれない可能性があります。またDistal protectionはballoonでもfilterでも、まずProtectionのない状況で狭窄部を越えなければなりません。各個人の血管の状況を考慮して、どのような方法で脳梗塞を防ぐか検討しています。

Distal balloon protection

狭窄部の向こう側に風船を広げます。血流が遮断され、血栓等が脳に流れません。ステント留置に成功したら、血栓等を吸引して取り除いた後、風船をしぼめます。


手術中の脳梗塞を防ぐよう、血流を遮断するための風船(バルーン)
Distal filter protection

狭窄部の向こう側に網を広げます。血流は遮断しませんが、血栓等は網で捕まえます。


手術中の脳梗塞を防ぐためのフィルター(網)
Proximal flow control

総頚動脈と外頚動脈で風船を広げて血流を遮断し、さらにカテーテルを体外で解放することで、脳から血液を逆流させます。逆流させた血液は、体外で網を通して血栓等をとらえ、きれいな血液を大腿の静脈へ返します。(少し複雑です。)

頚動脈ステント留置術行って頸動脈を拡張させても、糖尿病、高血圧、脂質異常などの動脈硬化リスクが改善されなければ、またステントの内側にプラークが付着し、細くなってしまいます。再狭窄といいます。引き続き厳重なリスク管理が必要です。 左はステント留置直後、右は再狭窄。

緊急再開通治療

t-PA静注療法が日本で認可されたのは2005年10月です。それまでは脳血管内治療の技術を駆使し、マイクロカテーテルを閉塞した動脈まで進め、ウロキナーゼという薬剤を注入して血栓を溶かしたり、風船で血栓を砕く治療をしていました。

t-PA認可された、約40%の患者さんが劇的に症状改善することされましたが、内頸動脈や中大脳動脈起始部等の太い血管は血栓量が多く、再開通しづらい事もわかりました。しかし血管内治療による局所動注でも同様で血栓量が多いと再開通できず、血栓を体外へ回収する道具が待たれました。血栓回収術と言います。

2010年10月にMerci retriever、2011年6月にPenumbraという血栓を体外へ回収する道具が認可され、有効性が期待されました。血栓回収術の始まりです。
しかし2013年ホノルルでおこなわれた国際脳卒中学会で報告された研究結果では緊急脳血管内治療の効果は証明されませんでした。ホノルルショックと呼ばれます。

当時の道具では血管再開通率が低かったことと,治療までの時間がかかりすぎていたことが考えられました。 2013年12月Solitaire、2014年3月Trevoが認可、既出のPenumbraも新たな手技が主流となります。

そして2015年米国ナッシュビルで開催された国際脳卒中学会で報告された研究結果で緊急脳血管内治療の効果が証明されました。 ナッシュビルホープと呼ばれます。道具が進化した結果、再開通率が上昇、手技も早くなりました。



当院で行ったうちの1症例
左手足完全麻痺で救急搬送されましたが、麻痺はほぼ消失し自宅退院されました

t-PA静注療法が日本で認可される前は、治療がかなり難しかった内頸動脈(太い動脈)が閉塞患者さんは、t-PA静注療法によって再開通率が15%に、1世代前の道具(Merci retriever)が認可されて30%に、そして今新しい道具(Solitaire等)が認可され50%以上に上昇しています。

ただし再開通に成功しても、再開通するまでに時間がかかった場合は脳細胞が死んでしまい、症状は良くなりません。病院にたどり着いた時点ですでに広範囲が脳梗塞に陥っている場合はt-PA静注も脳血管内治療もできません。

皆様の協力が是非必要です。脳卒中を疑ったら、すぐに救急車を呼んで医療機関受診してください。

脳動脈瘤コイル塞栓

脳動脈瘤とは
脳動脈瘤は脳動脈のもろい部分が瘤(こぶ)状に膨らんだものです。破裂しない限り無症状のことが多いです。まれに動脈瘤の場所によっては、周囲の脳神経を圧迫する等して、ものがぼやけて見える等の症状が出現する事はあります。ただし破裂すると、くも膜下出血を起こし致命的になる事があります。

破れた動脈瘤(破裂脳動脈瘤)を止血したり、破れる前の動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)を処置する事が、血管内治療の技術を用いて可能です。頭を切らずに治療するので局所麻酔下でも可能です。しかし細かい作業であり、体が動くとカテーテルによって血管を損傷する恐れがあり、全身麻酔下で行う事も多いです。







コイル塞栓術
矢印の動脈瘤内へマイクロカテーテルという極細のカテーテルを挿入します。これを通してプラチナコイルという糸のようなものを動脈瘤内に入れていきます。中程の4枚の写真、動脈瘤部が徐々に黒くうまってていきます。最終的に矢印の動脈瘤はプラチナコイルでうまるので血液が入らない、すなわち造影剤が流れ込まないので写らなくなります。

くも膜下出血を起こした破裂脳動脈瘤は、一旦(自分の力で)止血されます。しかし止血がもろく、高い確率で再破裂します。再破裂するとさらに症状重篤になりますので、是非止血処置が必要です。

コイル塞栓術は、体の負担が小さい手術ではありますが、動脈瘤の場所、形、大きさによっては手術が難しい事があります。もうひとつ開頭クリッピングという方法とどちらが望ましいか、患者さんごとに検討しています。

まだくも膜下出血を起こしていない未破裂脳動脈瘤が、脳ドック等で偶然見つかる事があります。未破裂脳動脈瘤は必ず破裂するわけでありません。破裂率はおおむね年間1-2%程度とされます。破裂する前に、コイル塞栓術や開頭クリッピング術によって処置する事は可能です。予防手術ということになります。ただし手術には合併症をおこす危険性もあります。破裂を防ぐために手術を行うはずが、手術中にカテーテル等で動脈瘤を破ってしまい、くも膜下出血を引きおこすことがあります。 動脈瘤の形や大きさ、場所によっては破裂する可能性が高いものもあるとされますので、各個人で破裂しやすさを検討し、予防手術を受けるかどうかを考えなければなりません。
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