【はじめに】
関節リウマチ(RA)は30〜50歳代の特に女性に好発する病気で、関節の滑膜炎が主体の全身性自己免疫疾患であります。進行すると軟骨や骨が破壊され四肢の関節変形や痛みによって身体機能障害を引き起こします。一度関節破壊が進んでしまうとその変化は不可逆的であるため、早期からの適正な治療が必要です。骨・関節破壊の初期に現れるレントゲン上の骨びらんはRAが発症してから2年以内に進行することが知られていますが、最近では特に発症して3ヶ月以内の早期に認められその後関節破壊が進行すると言われています。ですからその変化が起きるや否や、または起きる前にリウマチを抑える治療が有効となるわけです。つまりガンや他の病気と同じでRAも早期発見(RAの場合は早期診断)・早期治療が大事になってきます。
【RAの症状】
手指の関節が腫れる・痛い、朝に手がこわばるなどが初期の症状に多いです。その他全身症状として、微熱・倦怠感・貧血などがありますが基本的には関節症状を伴います。
【RAの診断】
基本的には診察(症状の経過、関節の腫れなど)、レントゲン、血液検査で総合的に判断します。血液検査のリウマチ反応(リウマトイド因子)は健常者でも陽性となることもあり、現在はRAの診断にもっとも特異的な抗CCP抗体も調べます。この抗体が当初より高値を示すと病気の活動性が将来的に高く骨破壊が進行し予後が不良になると言われています。 早期治療のためには早期診断が必要です。ある程度病気がすすんだ方や時間の経過が長い方のRA診断は困難でないことが多いのですが、発症して間もない方などはなかなか診断に苦慮することもあります。従来までは1987年アメリカリウマチ学会が決めた診断基準でRAかどうか診断してきましたが、この基準はRAを発症して平均8年くらいの患者さんを対象に作られたもので、いわゆる早期RA(発症して間もない患者さん)には適していませんでした。早期診断には2005年厚生労働省研究班江口らの早期RA診断基準案だけではなく今後は2009年アメリカ・ヨーロッパリウマチ学会による新しい分類基準も参考にして早期診断に努めていくことが大事だと考えます。
【RAの治療 最近の考え方】
RAの骨びらん変化は発症して3ヶ月以内に認められその後関節破壊が進行すると言われています。よってRAの治療目標は発症早期から炎症を抑え込み関節破壊を未然に防ぐことであります。 1) 早期診断 2)早期からの抗リウマチ剤積極的投与 3)炎症を厳格にコントロール (タイトコントロール)、その結果RAの治療目標が従来の寛解(症状がなくRAがコントロールされている)ではなく臨床的寛解(痛みや腫れ、検査値異常もない)、構造的寛解(レントゲンで関節破壊が進行していない)、機能的寛解(日常生活の身体機能の改善・保持)へと進化しました。 簡単に言いますとリウマチが発症して間もない早期から強い薬を使ってリウマチを抑えるということです。具体的には、現在世界的スタンダードとなりつつある方法として抗リウマチ剤のMTX(メトトレキサート、リウマトレックス・メトレート)を第一選択とし、効果がなければ4〜8週ごとに増量し、それでもリウマチの勢いが抑えられなければ生物学的製剤を使用するといった治療法です。
【RAの薬物治療】
RA治療の基本です。RAの薬物治療は近年めまぐるしく変貌を遂げました。従来の抗リウマチ薬に加え生物学的製剤(抗サイトカイン療法)の登場により強力にRAの炎症をコントロールできるようになりました。 抗リウマチ剤にはMTX(メトトレキサート、リウマトレックス・メトレート)、アザルフィジン、リマチル、プログラフなどがあります。現在の主流はMTXですがその他のアザルフィジンやリマチルでも十分コントロールできる方も多く、また上記の抗リウマチ剤をいくつか組み合わせたコンビネーション療法も有効性が報告されており、その人その人に合った抗リウマチ剤を選択することが大事と考えます。MTXはもともと抗ガン剤として承認されたものですがRAにも有効であることが判明しRAにも承認されました。MTXは世界的に最も使用頻度が高く、投与量を増量すれば効果が高くなることもわかってきました。まだ日本では上限8mg/週までしか使えませんが、欧米では通常20mg/週まで増量し中には30〜40mg/週まで投与する施設もあります。日本でもいくつかの施設ではリウマチ専門医のもと8mg/週を超えた投与をしています。効果が期待できれば当然副作用のリスクがあります。吐き気・口内炎などの消化器症状や肝機能異常は葉酸というビタミン剤と一緒に服用すればある程度軽減できますが、肺炎や造血障害といった副作用はなかなか予防できません。症状によっては服用中止で軽快することもあり、この副作用も早期発見・早期診断が重要となります。また患者さんの既往症・合併症によっては服用が不可能なこともあります。慢性肝炎や重度な肝障害・腎障害、間質性肺炎などには禁忌となっています。 最近のもう一つの主役である生物学的製剤(抗サイトカイン療法)ですが、2010年現在日本では4剤(レミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラ)が使用可能です。今年中にもう1種類加わる予定です。サイトカインとはリンパ球などの種々の免疫担当細胞から分泌される物質で主に免疫・内分泌・神経系の働きに関与しています。正常な状態ではサイトカイン同士うまくバランスがとれているのですが、関節炎があるといくつかのサイトカインが過剰に産生され骨や軟骨を破壊してしまいます。RAでは主にTNF-αやIL-6といったサイトカインが産生され関節炎・関節破壊の原因になっていますのでこれらを抑えてRAの進行を阻止するのが抗サイトカイン療法です。従来の抗リウマチ薬を3ヶ月以上継続してもRAコントロールが不良で多関節に腫脹・疼痛が残存し血液検査においても炎症反応が高値の場合使用します。生物学的製剤は免疫を低下させる副作用を有しますので使用開始にあたっては体の中に感染がないか(結核や肺炎など)検査してからとなります。 生物学的製剤は抗リウマチ剤のMTXとの併用が必須かまたは推奨されています。患者さんのRA活動性や症状、既往症や合併症などをふまえて個々にあった治療法を見つけていくことが大事だと考えます。
【RAの手術療法】
最近の薬物療法の進歩により関節破壊を食い止め将来的には手術療法が減少すると言われていますが、残念ながら現状は依然として手術療法は不可欠な治療手段であります。 RAの関節障害に対する手術療法は主として 1)滑膜切除や関節形成術(手関節・肘関節など) 2)人工関節置換術(膝関節・股関節・肘関節・足関節・手指関節など) 3)関節固定術(手関節・手指関節・足関節など) 4)脊椎手術 があげられます。 当院では熟練した関節外科医やリウマチ医、脊椎外科医とチームを組んで治療にあたらせていただきます。また術後に不可欠なリハビリテーションに関しては理学療法士約30名、作業療法士約10名と全国でもトップクラスの人数を誇る体制で後療法に取り組んでいきたいと思います。
【RAのリハビリテーション】
当院には理学療法士約30名、作業療法士約10名、言語聴覚士、助手を併せて総勢50名と全国トップクラスの人数を誇る体制でリハビリテーションを実施しています。手術後のリハビリテーションはもちろんのこと、通院での外来リハビリテーションも実施しています。 また手術後に全身状態が落ち着いてリハビリに専念したい方には回復期リハビリテーション病棟に転棟していただき思う存分リハビリテーションに励むことも可能です。
【最後に】
以前リウマチは不治の病と言われていましたが、最近の薬物療法の進歩によりリウマチは治る病気となりつつあります。リウマチが発症すると早期から骨・関節変化が現れその後関節破壊が進行しますので、なるべく早い段階からリウマチを診断し薬物療法を開始しなければなりません。その為には、「関節が痛い」「腫れぼったい」「朝に手がこわばる」などの症状を自覚したらなるべく早く病院を受診し診察を受けることをお勧めします。 そして薬には効果もありますが当然副作用もあります。また患者さんの持病によっては使えない薬剤もあります。副作用を恐れるあまり適切な薬物治療を受けず関節症状・関節破壊が進行して動けなくなるほうが患者さんにはつらい結果となってしまいます。患者さん自身にも薬の飲み方・副作用を十分理解していただき、疑わしい症状を自覚したら早めに内服を中止して病院受診をしていただければ副作用を最小限に防ぐことが可能です。副作用も早期発見が大事です。 また既にリウマチと診断され治療を受けている方や、関節症状が進行し手術が必要な方も、当院には総合病院ならではの医療機器や設備ならびに充実したリハビリテーションを兼ねそろえておりますので、何なりとご相談下さい。
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