昨年のベストセラーに『国家の品格』(藤原正彦氏著)なる本がありました。流行語大賞にも入っていたと思いますので、ご存知の方も多いかと思います。「民主主義よりも武士道精神の勧め」などやや極端で、賛同しがたい部分もありましたが、医療に携わるものとして読んだ場合に、共感する部分もありました。例えば、現代社会では「論理性」の正しい事が、最重要視されているが、その論理展開の出発点が異なれば、いかに「論理性」が正しくても結果が異なるわけで、したがって、出発点を決める力となる「情緒性」が最も重要であると主張しています。
医療に当てはめてみると、医師は、 学生時代から論理的に正しく判断し、治療計画を立てていくという教育を受けており、医療の現場に出てからも論理的に正しい診療を心がけているものです。この事は、いわゆる医療の標準化に深く繋がるものであります。
その一方で、オーダーメイド医療という言葉も昨今多用されています。オーダーメイド医療の良し悪しは一概には言えない部分もありますが、これは、患者様の病気のみならず患者様の希望を始めとして生活史や社会環境も含めて総合的見地に立って診療方針を決めていこうとするものです。このような診療を行う場合には、藤原氏の言うところの「情緒性」というものが、医療従事者に強く求められる事になる様に感じました。
少々、抽象的な表現になりますが、当院では深い「情緒性」に基づいた「論理的」に正しい医療を目指していきたいと考えております。
さて、昨年は、医療制度の改定(改悪?)を始めとして、当院においても例年以上に波乱万丈の一年間でした。そのような中でも、8月には電子カルテの導入を成し遂げ、医療の質、安全性および透明性の向上に少しずつ寄与しつつあることは、大変喜ばしいことであります。患者様にはご不自由をお掛けする部分もあるかと存じますが、より良い医療環境を構築していくためには不可欠なものですので、ご理解のほどお願い申し上げます。
また、新年度はDPC(Diagnosis Procedure combination)導入に向けた準備に本格的に取り組む事になります。DPC導入に関しては「情緒性」を挿みこむ余地はなさそうですが、職員の皆さんと一緒に学びながら努力し進めていきたいと思います。
皆様にとって、より良き年となることを祈念しつつ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。
平成19年 元旦
病 院 長 |